にて

岩屋には
おおぜいの人がいて
味噌汁を吸ったり
臍を見せ合ったりする
這いつくばり
地の底の音を探る
切り揃えた指を
ひらひらと舞わせ
小さな声で
蛾のように話す


そんなときにふっと
ともし火が灯る


明かりのもとでは
死人の胸に
濡れた癌が浮かび上がる
花のように


夢の彼方の赤い花