1-3

1
彼女が死んで数世紀。その影響は長く後世におよび、もはや彼女を知らない人は皆無と言える。しかし具体的に何をやったかは知られていない。忘れられた偉大なる事績を記念するために伝記を書きたいがどうか、と台所の本人に訊ねると「プライベートに触れないなら」と快諾してくれた。
 
2
これは不思議な井戸だ。石を落とすと、なぜか背中に石をぶつけられる。見張りを立ててどこから石が飛んでくるのか見極めようとしてもわからない。以前、土地の造成のために井戸を埋める計画があった。だが井戸に土砂を落とした瞬間、猛烈な土石流が作業員を襲い、計画は頓挫した。
 
3
旅の男は言った。おれは一夜のうちに海を飲み干してやろう。翌朝、人々が浜に出ると、なんと海が干上がっているではないか。人々は怒り、男を散々に打ちのめして殺してしまった。男は死ぬ間際に言った。おまえたちに神の裁きのあらんことを! その数刻後、海辺の町を津波が襲った。