探索行

島に上陸してからの展開は早かった。打ち合わせの通りそれぞれ各所に散り、目当ての宝を探しにかかった。あるものは打ち棄てられた畑に、あるものは浄水施設に、あるものは神社に。自分は半壊した居住区に設けた拠点から、携帯で指示を出していた。月光が島…

黄泉行き 昔書いたのを久しぶりに読んだら面白かったから張っておくよ。いいかげん昔のもので食い繋ぐのはいかんと思いつつ、今は見つめなおすターンであるとぼんやり。

料理

山に来て皮を剥いで帰ると 大きな床は血で濡れている その上っ面に粗塩を撒いて たくましさに一人うなずいたあと 脇のにおいが染みてきた古い こめかみと目を念入りに洗っておく 今日こそ眠れると思ったのに ゆっくり人を殺せると思ったのに 飛んでいった袋…

ここに眠る

石のおもしをのせて眠る 石のおもしをのせた真夜中に 紫の腕がやってきた 紫の腕はふるふる震えて 「生きたい、生きたい」と泣いていた かわいそうに思ったので 布団の中に入れてやったら ぎゅっと握りかえしてきた 石のおもしをのせて眠る 石のおもしをのせ…

新しい花

古い首を間違えてしまう これは現実のこと 誰かが立ち去ったあとの石の台座に隠れて 油じみた包みをやりとりして別れた 猫はとうに死んでいたので いまさら魚を剥がすこともなかった 赤い水と青い水が落ちてきて ときおり傘の骨組みを夢見た ぬるんだ風が遠…

雪、無音、窓辺にて

雪、無音、窓辺にて ページを繰る指、白い指先 しらしらと明けてゆく頬に 血のぬくみを伝えるひかりの通過 あたたかでひそかなまどろみのなか 編みあわさった夢をひも解きつづける 歌うように、息をするように いつまでも いつまでもページを繰る指 いつまで…